タイチーのルーツ
永い歴史の中から培われてきた中国武術の中の一つである太極拳は、400年程の歴史を持っています。発祥は中国明時代、1528年に戚継光(せきけいこう)将軍が、兵士の体力と戦力を増強するために民間で行なわれてい幾つかの武術流派の動作をまとめて「拳経32勢」を編み出しました。
それから約50年後、河南省の陳王庭がこの「拳経」から発展させて陳式太極拳を編みました。陳氏は拳法と導引法という道家の伝える健身法、そして経絡学説を中心とする医学とを結び付けました。これが太極拳の始まりです。
この陳式太極拳を学んだ楊露禅(1799年~1872年)が楊式太極拳を編み、さらに楊登浦(1833年~1936年)が発展させました。楊式太極拳を学んだ呉全佑が、その息子と編み出したのが呉式太極拳となりました。さらに楊式太極拳から武式太極拳が誕生し、これを学んだ孫禄堂は形意拳の武法と太極拳の手法を取り入れて孫式太極拳を編み出しました。こうして、五つの流派に枝分かれしながら現代に受け継がれてきました。
五大伝統的タイチーの特徴とは?
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陳式 快慢、高低、跳躍、活発、発勁、豪柔
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楊式 大きく、ゆっくりとした動作の連続
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武式 動作は非常に小さく実戦的
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呉式 大きく伸びやか、特徴的前傾動作
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孫式 開合、進退、転折機敏
タイチー練習の基本的特徴
太極拳は人間の生理にかなうもので、「静をもって動を御し」「動であるが静の如し」「動の中で静を求める」「気は膨らみ、揺り動かすを宜しとす」などを要求し、意念、動作、呼吸三者を調和させながら行なう体育運動です。穏やかな動作が多く、動作の接続部分だけが異なっているだけで、動作の重複も少なくありません。
ですから、太極拳は青壮年ばかりでなく、中高年、女性の全身健康状態の向上及び大部分の病人のリハビリにも適しています。特に陳式では強靭な脚力と柔軟な腰部が練習の目標です。
以下はタイチーの基本メソッドであります:
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こころを静かにして意を使い、上半身を正しく伸ばし、カラダは緩やかにのびのびさせる。
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緩やかにのびのびした後、柔に入り、柔の中に剛を萬す。
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肩を垂らして肘を沈め、腕を下に向けて指をゆるめる。
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腰椎を源にして動かし、力を手足の末端まで貫く。
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胸を内側に窪めて背を張り、股間を降ろして腰を落とす。
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膝を曲げて内股を円くし、尾骨に力を入れる。
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目は手に従って移動し、歩みは体に従って変わる。
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三尖六合
(手-足、肘-膝、肩-骨盤)、上下一線になる。 -
中で働き外に表し、呼吸を調和させ、気を丹田に沈める。
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意が動くと形が従い、勢が上がると意が連なる。
タイチー練習の効果
現代の研究によって、タイチーは、心臓や肺に過重な負担をかけず安全に全身運動ができる、自律神経失調症などに対して直接的な調整作用があるなどが分かりました。深くゆったりとした呼吸は腹腔内の血液循環を活発にし、胃腸の蠕動運動を促すので、呼吸器系、消化器系統にいい影響を与えます。また、腰を軸とした円の動きであり、絶えず重心を移動する運動ですから、骨格、筋肉、関節を鍛錬し、バランス感覚も養うことができます。全身の各系統、器官の働きの向上、体内の代謝の促進、老化防止ができます。下半身、とくに内ももやヒップの筋肉が刺激され、全身が引き締まります。女性にとって、これ以上ないフィットネス効果が期待できます。これは、大変嬉しいことです。太極拳を行なうことは人間が本来持っているホメオスターシスに有益だけでなく、一つひとつの動作でカラダの中心を探し、コリや歪みを改善していきます。ストレッサーが増加している現代社会にあって太極拳は新たな価値を得つつあると考えます。